■ 苦節から甦った、高梨選手

  スキージャンプの高梨沙羅選手、「サラちゃん」と今、知らぬ人はいない。平昌オリンピックでは銅メダルを取った。そして、オリンピック後の世界選手権では久しぶり、世界一を2度跳び、これで世界チャンピオンは55勝、男女合わせても圧倒的な記録を作った。
  2年前まで、サラちゃんは連戦連勝、跳べば優勝、向かうところ敵なし、全ての競技会は彼女のためにあった。唯一、ソチ大会で失速した。
  変調は去年1年、彼女を襲い続けた。出ても出ても勝てない、国内でも勝てなくなった。平昌を目前にしてそのスランプは極度に酷くなった。平昌の本番、それでも本人と全ての日本人の祈りが届いたか、漸く3位に滑り込んだ。人間には浮き沈みはある、しかし彼女ほどの浮き沈みは珍しい。頂点を極め、ピークを知った者にとって、どん底に喘ぐことがどんなに辛く厳しいものか、社会の目も残酷であった。あの1年をよく耐えた、と私は思う。
  オリンピックが過ぎ、風向きが変わったか、あの1年間の苦悩と我慢が、遂に勝負勘を戻してきた。「1勝することがかくも難しく、勝利の味はかくも甘やかだった。オリンピックの金メダルは逃したけれど、1勝の重みに気づいた彼女こそ今真の勝者と言えるではないか」と「日経新聞」は書く。サラちゃんは、挫折とどん底にいる多くの人々にどんなにか勇気付けた。