■ 米国、「新核戦略方針」に見る危うさ

  米トランプ政権が今後5~10 年の新たな核政策の指針となる「核戦略体制の見直し」(NPR)を公表した。その概要、

『核使用は核以外の戦略的攻撃を受けた場合も含む、
核の先制不使用政策を否定、
世界は大国間の競争に回帰、
中国、ロシア、北朝鮮、イランの脅威指摘、
低爆発力小型核の導入、海洋発射型核巡航ミサイルの研究開発 等』

  「 非核保有国への核攻撃はしない、新たな核兵器の開発はしない」とする2010年のオバマ大統領「核なき世界」方針を完全に放棄した。当然ながら北朝鮮の核ミサイル開発を念頭に置き、その抑止力強化を目指し、併せて中国、ロシアを含む世界の軍事情勢の中で、結局核装備の優位こそが戦争を抑止し、平和を維持する最後の手段である、というトランプ大統領の軍事観が背景にある。軍縮、核軍縮、核拡散防止という概念は取り敢えず大きく後退した。
      我が国にとって核問題はとりわけ難しく、悩ましい。核の廃絶は当然に目指すものであるが、現下多くの核保有国が存在し、とりわけ北朝鮮の核ミサイル開発が強行され、日本の国土と国民が現実かつ急迫の脅威に晒されている以上は、米国の核戦略の持つ抑止力(核の傘)に依存することはやむを得ない選択である、と説明されている。

  かくして今回の米国新戦略方針に対して政府はまず「高く評価する」(河野外務大臣)と発表した。

  トランプ大統領の米国が世界の安全保障に最大のコミットメント(責任)を持っている(世界の警察官)のが現実である。また日米同盟ゆえに日本の平和と安全が米国に守られているのも現実である。

  しかし、第二次大戦後の70余年、世界の平和は結局軍拡と闘い軍縮と共にあった。ましてや核戦争だけは絶対悪として、日本は(被爆国をいうまでもなく)その廃絶運動の先頭にあった。抑止力など核戦略の持つロジックはわかった上で、なお核軍縮の旗は常に高く掲げてきた。一方北朝鮮の核開発への暴挙は、米国と共に我が国はいかなる口実も許さず、国際社会の徹底した経済制裁の最先端に立つ所以である。

  さてこの時点で米国は、世界への核政策を根本に改める必要性はあったのか。北朝鮮への対応と世界への核政策とをどう調整するのか、もう少し整理した方が良い。トランプ大統領の世界平和への責任意識に沿いつつも、論理が荒っぽく、その行く末に大きな危うさを感じることを禁じ得ない。