■ フィリピン大統領の異常

  フィリピンに異常な大統領が出て深刻な事態となってきた。フィリピンのドテルテ大統領は今般中国を訪問して、中国に多額の援助を供与され、融和を約してきた。返す刀で、米国とオバマ大統領を名指しで「決別する」と切って捨てた。今アジアは地球上で最も危険な政治環境の一つにあるが、それは言うまでもない、中国の海洋覇権主義が深刻な危機をもたらしており、南シナ海の情勢は早晩東シナ海を介してわが国への危機も現実のものと拡大する。中国とフィリピンの間で訴訟が行われ7月、オランダ・ハーグの国際仲裁裁判所は中国の進出を「明白に違法」と判決した。中国は「法の支配」を受けようとしない。そのフィリピンがここで中国の軍門に降ることは、フィリピン自身が主権の維持と安全保障、国家としての存立基盤を失うのみならず、他の諸国いやわが国にとって驚天の変化をもたらす。
  そのフィリピンに6月、ドテルテ大統領が就任したときは、国内で麻薬犯罪者を自由にリンチ、抹殺するなど、近代民主主義からは信じられないほどであるが、所詮は発展途上国の指導者であると高を括っていた。然しその後の発言や行動を追っていくと、最早笑えるどころか、極めて深刻な国際問題を引き起こし始めた。この大統領は国際政治、外交政策の素養や経験、見識が十分あるとは思えない、あるのは国内の地方政治で培った政治手法と政治勘である。国内支持率が80%以上というほど圧倒的に高いことは、却って始末が悪い、その彼の言ったことは大統領という国家指導者の言動であれば直ちに対外政策に反映する、その彼を抑止する人はいない。外交関係、国防関係が最も依拠してきた米国との同盟関係を一夜にして覆そうとするドテルテ氏にいかなる論理と計算があるというのか。

  ドテルテ大統領は来週にも来日し、安倍首相らとも接触する。異常な性格の持ち主とあらば、扱い方に工夫が要ることは当然であるが、然しことが外交政策、対外政策に絡むとならば個人的、感情的な対応に矮小化してはならない、常識と良識で諌めつつ、なお米国やわが国、西側諸国との同盟関係の重要性を理解させるには高度な外交技術が必要である。
  さすがの米国も、ドテルテ大統領に対し「同盟を維持するのか、不必要な不確実性をもたらさないように」と警告を発した。