■ 山崎拓『YKK秘録』の衝撃 (その 1)

  山崎拓氏が本を出された。YKKとは山崎拓、加藤紘一、小泉純一郎という3人の少壮政治家がグループを組んで一時代を作った。うち小泉は総理になり日本の今日、改革と繁栄の基礎を固めた。
  山崎は昭和47年から平成23、4年まで実に40年に亘って、少なくともその半分は政治の中枢にいた。自民党の幹事長や副総裁、各閣僚を務めた。赫々(かっかく)たる政治歴であるがとりわけYKK誕生、自民党下野、細川政権成立、自社さ政権、加藤の乱、小泉政権成立、郵政選挙・・重大政局では常に直接の当事者として関わった。それらのことを驚くべき克明な記録で再現する。毎日の詳細な議員手帳記録(日記)を基礎とする。主観と評価を極力避けながら何より事実をもって語らせる。活動の日時は何時何分までも精確に記し、誰と何処で会い、どういう会話をしたことも細大洩らさず書き貫いている。その具体性と客観性は読む人、とりわけ直接関わったであろう人々には衝撃すら与える。
  私は山崎氏に直接政界への手引きを頂いた。この記述の期間はほとんど政治行動を一にした、というより山崎氏の直接の指導の下で動いていた。「加藤の乱」において、加藤派は崩れたが、山崎派には1人の落伍者もいなかった。情況の説明と情報の開示で事件の全貌を改めて理解した。生々しかったその光景が昨日のことのように戻って来る。
  政治家の書く本はたくさんある。回顧録で有名なものはいくつもある。その時々の情況背景を政治家は書くが、自らの行動を主観的、どちらかというと都合よく、書く。主観と評価が前面に出る、不利なことは触れない、それが人情というものであろう。だから政治家の本は、学問的には価値が低いとされてきた。ところが山崎本は多少異なる、彼の驚くべき記録癖がなせる業である。大雑把なところがない、毎日の行動を余りに克明に記録していた。飲んだ場所、飲んだ相手、その固有名詞も肩書きも全て記録する。几帳面な性格は知っていたが、かくも緻密な記録を書き起こしたことには驚嘆する。