■ フィリピン、「仲裁裁判所」で中国に勝訴

  フィリピンは中国を南シナ海の海域について国連海洋法条約に基づく仲裁裁判に訴えていたが、その訴訟に勝訴した。中国が南シナ海の広範な海域に勝手に引いた「九段線」は「根拠無く、違法」と断じたもの。極めて妥当な判決でフィリピンはもちろん日米を含む全ての国際社会が高く評価、敗訴した中国だけがこの判決やそもそもこの裁判自体が「違法なもので認められない」として反論している。この判決は当然拘束力を持つ。中国は「法の支配」という近代社会の大原則さえ拒もうとしており、国際社会での孤立化の道を歩きかねない。

  ところで私はこのフィリピンの仲裁裁判に非常に強い思い入れを持ってきた。昨年8月フィリピンのマニラを訪問した際、単身でデルロザリオ外務大臣及びガスミン国防大臣と会談した。この仲裁裁判の話を持ち出したところ、両大臣とも如何にも自信なさ気だったので、私は日本はあらゆる応援を惜しまないと激励した。一転、10月になってフィリピン提訴の「裁判管轄」が認められ、この裁判が内容の審査( 本案審査)にまで入ることとなった。勝訴への光が見えてきた瞬間である。
  私は裁判の動きを注意深く見守ってきたが中国が裁判をボイコット( 欠席)している状態では勝訴する可能性は非常に高い、と読んでいた。年が明け、平成28年になると中国が微妙にしかし無闇、露骨に騒ぎ始めた。彼らは裁判の行方が不利に動いていることを察知したのだろう、3月頃以降は異常なまでに、裁判の結果を認めない、守らない、と叫び出した。更に判決に事前の脅しをかけるつもりか、南沙海域で空前の海軍演習を展開したのはこの7月に入ってからである。(なんと稚拙な反応かと可笑しくなるが)中国がその判決をいかに怖れ慄( おのの)いていたか、しかもその現実が白日のもとに露わにされた今、中国の受けた衝撃は想像を超える。いかなる武力よりも、一介の「ペンの力」( 訴訟)の方が遥かに大きいという格好の実例がここにある。
  明日からモンゴルでASEM( アジア. ヨーロッパ首脳会議) が開かれ50カ国が集まる。中国が国際法を遵守し、より真っ当な国際国家に進むよう首脳会議総出での働きかけを祈りたい。