■ 嗚呼、特攻の母よ

  その息子の33回忌が終えた時、母親がいきなり号泣した。墓石を抱いて声を限りに息子の名を叫んだ。母の泣くのを見たのは家族にとって初めてだった。母は息子が特攻を志願した時も、出征を列車で見送る時も、そして白い木箱で戻ってきた時も、決して涙を見せなかった。いや立派な息子を持ったこと、お国に送り出したこと、そして立派な仕事を終えたことを、むしろ誇ってさえいた。
  戦争も終わり、長い平和の時代になり、余りに豊かな日本になった。そして今、年老いた母は初めて泣いた。「今まではお国に預けていました。今までは天皇陛下に預けていました。そして今、私の息子に戻ってきました。思い切り抱いてあげます。」
もちろん父も母も遠にいない。「今の日本は兄貴のお陰だな」と弟がぽつりと言う・・・

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  これは産経新聞、特攻隊特集のひとつです。涙を隠して読みました。決してこの平和を失ってはならないと誓いました。