■ <母は強かった>アメリカ山中で行方不明、日本青年見つかる。

 昨年11月、一人の日本人青年が米国西海岸・ワシントン州のセントへレンズ山 (2,550m)で遭難した。警察を中心に懸命の捜索が行われた。北アメリカのカスケード山脈の真冬はとりわけ厳しい、捜索はやむなく途中で打ち切られた。家族は不安のまま年を越した。天を仰ぎながら春を迎え、夏もいずれ越えようとしている。 再び寒い冬が来れば、もはや息子は永遠に見つからない・・・

 遡ること6月20日だったか、母親とその娘が私の事務所に相談に来た。この夏を逃せばもう望みは絶たれる、居ても立っても居られない、直ぐにでもセントへレンズ山に飛んで行きたい、と訴える。私は、慌ててはいけない、しっかり準備しよう、と二人を抑えた。
 私はシアトルの日本総領事館と連絡を取った。昨年から事故を担当していた。外務本省にも接触し特段の配慮もお願いした。領事館経由で地元警察がもう一度捜索隊を組む予定があることも窺った。旅行会社を探し現地の状況を把握した。山岳調査会社とも接触しその信頼性と能力をひそかに探ったりした。

これ以上もう待てない。引き寄せられるように母親は、8月1日を期して成田を出発した。母親だけを出すわけにはいかない、言葉も出来る、事務処理も出来る人間をアテンド( 付き添い) させることとした。母親の現地ポートランド行きもこれで3度目、滞在歴も既に2,3ヶ月に及ぶ。
 旧知の山岳調査会社に出向き更に広範な捜索を依頼したが、調査会社はもはや新発見は難しいと正直に応えた。母親は日本領事館、さらに米国の州や市当局にも警察にも、そして地元社会にも懸命に訴え歩いた。

 母親はあるアメリカ人男性を捜すことに強く拘(こだわ)った。「尋ね人」広告ででも捜したい。この人が必ず息子の居所を見届けているはずだ、と言う。ところで実は、この男性は実在の人でない(!)。昨年暮れに、母は夢枕でこの男性が息子と一緒にいたのを見たと言う、はっきり顔も見たと言う。あろうことか、青年の姉も自分の夢の中で、弟のそばに男性が立っていたと言う。二人の記憶イメージは殆ど一致した・・・・。夢の中で見た人間を捜す、という訴えにはさすがに私も戸惑ったが、母娘の熱意には勝てなかった。じゃあ似顔絵でも描いて貰ってと言ったら、実に次の日に描き上げて来た。似顔絵、姿格好をプロの絵描きさんにスケッチしてもらったと言う。

 運命の8月9日、ワシントン州の地元警察は、本気の山狩りに臨んでくれた。90人もの大捜索隊が懸命の捜索を展開、およそ半日経過した頃、ヘリコプターが山の中腹で遭難者を発見した。程なく所持品から息子であることを、母親が確認した。 「大西洋輔」君が遂に母の胸に戻った瞬間だった。
地元警察はその旨を記者発表し、そのニュースはヤフーやグーグルで世界中に配信された。

 かくして日米、多くの人々のサポートで青年は発見された。母娘、肉親の思いが如何に大きかったか。母の祈りと家に帰りたいという息子の思いが遂に叶った。
 お盆(8月15日)に間に合ったというのも仏様のお手配としか思えない。

                           ( 平成26年 8月14日 記 )

 

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コメント: 2
  • #1

    カリフォルニア在住者 (月曜日, 18 8月 2014 12:46)

    7月半ばにセントヘレンズからかなり南ですが、カリフォルニアとオレゴンの州境にあるマウントシャスタにあるレストランで大西さん行方不明のポスターをみかけて以来、ずっと気になっておりました。事件に巻き込まれたのか遭難にあわれたのかとても安否が気になり時々記事検索をしておりました。マウントシャスタでも、夏でさえとても天候が変わりやすく現地若者たちが命を落とされています。ご家族の気持ちを思うととても胸が痛みます。でもご努力の甲斐合って見つけられたとのこと安堵しております。アメリカからご冥福をお祈りします。

  • #2

    Rie Onodera (火曜日, 30 12月 2014 13:16)

    大西君とは、亡くなる前まで知人を通して繋がっていました。
    私が参加する市民団体の集会などにも来てくれたり、福島の子供たちのための活動などにも積極的に参加してくれて、私もいつもお会いするのが楽しみでした。世界中を旅していたとも伺い、また勉強熱心でこれからを担う若者として多くを期待していたので本当に悲残念でなりません。遭難されたと聞いてから半年以上たち、懸命な捜索の末見つかったと聞き、ご家族の心中もお察ししながらでもとにかくうれしかったです。ご家族の元に帰れてようやく私も少しほっとしました。大西君が志していたものをこれからも胸に刻みこれからも大西の心とともに頑張りたいと思います。