■ 村上春樹「色彩を持たない・・・」を読んで

 話題の村上春樹『色彩を持たない多崎つくると、・・・』を読みました。「色彩を持たない」とは個性のない、性格の弱いというくらいの意味で、30代独身の主人公「つくる」はいつも受動的だが、だから感受性だけは強い。高校時代の仲良し4人組との謂れなき確執から始まり、そのルーツを探し続ける(私は紛れもなくこれは推理小説だと思いました)。その過程で出会う人物とはいちいち夢か現(うつつ)の境を彷徨い合う。遠くフィンランドまで、殆ど衝動的に飛んだりもした。結局何をしたいのか分らない人だったが、人にはその出自と、近ければ近いほど複雑な人間関係と、やはり最後は男女の性愛が深層に横たわる。

 村上春樹という作家は超有名で、とりわけ本作については特異な販売戦略があった。日時を指定した売り出しには全国書店で何十万の人が列をなし社会現象とさえ言われた。私は日頃天邪鬼(あまのじゃく)を任じて殊更に流行を避けようとするのですが、今回は本屋で立ち読みして多少世間の風潮にも付いていこうと考えました。そしてこの村上作品も相変わらず難解、ふわふわとした、取り留めのない流れでした。しかし人間の心理や感情、環境や背景の描写、表現力は、読む人を激しく酔わせるものがあり、併せて世界観、哲学らしきものを醸し出す。これが彼の人気でしょう。彼について、文学的評価は二分しているとも言われ、ただ出版社の宣伝に世の中が踊っているだけだと。私の意見もそれに近いのですが、所詮世の中、勝てば官軍では。

 この連休、私は選挙後初めてゆっくり出来そうで、今まで忙しさにかまけて読書もしなかったことに気づきました。しっかり体力、気力を養いたいと思います。