■ ニクソン大統領の恩赦に見る政治観

 1974年9月、フォード大統領はニクソン前大統領を恩赦した。フォードはニクソンがウォーターゲート事件で大統領を辞任したに伴い副大統領から昇格したばかりであった。世の中は轟轟(ごうごう)たる非難をした。しかし同僚の司法省の人間はみなそれを支持した、恩赦しなければ国政は法廷闘争などで数年間は混乱が続くに違いないから。後にフォード大統領は回顧録で、政治的には不利なことはわかっていたが、「国家のためには」良かれと思い恩赦を決断した、と書いた。案の定フォードは76年の大統領選で民主党のジミー・カーターに敗れ、遂に再選されることはなかった。 
 当時の政治には今日のような分極化などはなかった。共和党のフォードは民主党の政治家とも実にフランクに付き合っていたし、何でも最後は話し合いで折り合いをつけた。今のアメリカの財政危機、いわゆる「財政の壁」問題でも、フォード大統領なら「分かった、双方痛み分けで行こうじゃないか」と言って、議会対策は直ぐに解決したに違いない・・・・。 
 これは今、日経新聞に連載中の『私の履歴書』、カーラ・ヒルズさんの文章です。ヒルズさんは昔アメリカ通商代表部代表(閣僚)を務めた女性で、日本にとって中々強者と恐れられた。私はこの女性と一度会ったことがあるし、何より私は丁度アメリカに留学中で、ニクソン大統領の辞任やフォード大統領の就任など、また恩赦の経緯も鮮明に記憶していたのです。ヒルズさんは共和党員でフォード大統領に身びいきなのはわかりますが、今のアメリカどころか、わが日本も自民党と民主党がなあなあで同席するなど考えられず、時代の隔たりを感じます。