「躁うつ病者の契約」について

Q

 先日,私の父が,画廊から高価な絵画を購入して帰ってきました。父は躁うつ病なのですが,躁状態で気分が高揚して買ってしまったようです。このように判断能力が落ちている状況で契約した場合でも契約は有効なのでしょうか?法律的に解約返金してもらう方法はないでしょうか?  (40歳男性)

 

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 A

1  小さな子供や,認知症の方,泥酔した人など,「自分のした行為によってどのような結果になるか」を理解できない人が行った契約は,法的に無効です。

しかし,お父様の場合,躁うつ病で判断能力が落ちていたとはいえ,自分のした行為の結果,つまりは「絵を買ったら代金を支払わなければいけなくなる。」ということは理解できていたでしょうから,躁状態であったことによって直ちに契約が無効とまではいえないでしょう。

 

2  もっとも,お父様が,キャッチセールスなどにより不意打ちのように画廊に連れて行かれて契約したような場合は,「特定商取引に関する法律」の訪問販売にあたりますので,このことのみを理由に契約を解除して,返金を求めることができます(クーリング・オフ)。クーリング・オフが可能な期間は,クーリング・オフができることなど法定の事項を記載した書面を受け取ってから,原則として8日以内です。

クーリング・オフは,契約の相手に対し,契約の内容を特定したうえ,「解除(クーリング・オフ)します。」という旨の書面を送付する方法で行います。ただ,期間内にクーリング・オフをしたということを後から証明するために,内容証明郵便を利用することをお勧めします。

 

3  また,お父様が,画廊から契約の重要な内容(例えば,絵の作者や市場価値)について事実と異なることを告げられたり,「これから必ず値上がりする」等断定的な勧誘をされたために買ってしまったような場合には,消費者契約法により,契約を取り消すことができます。取消しが可能な期間は,「だまされた」等と気付いたときから6ヶ月,または契約から5年以内です。

   書面発送だけで効力が生じるクーリング・オフとは異なり,取消しの意思表示は,相手に到達しなければ効力を生じないので,取り消したことを証明するためには,「配達証明付き」の内容証明郵便を利用して書面を送付しておくと良いでしょう。

 

4  クーリング・オフ等ができない場合でも,当事者の合意があれば解除は可能なので,諦めず,画廊に事情を話して,解約・返金の交渉をしてみてはどうでしょうか。

 

5  躁うつ病の方が,躁状態で判断能力が低下しているときに浪費をしてしまうということは,よくあることのようです。したがって,今後のために適切な予防策をとることも大切です。

判断能力が低下した状態が続くようでしたら,裁判所に,補助人や保佐人を選任してもらうことも検討してみるべきでしょう。

 

6  実際に解約・返金が可能か,その他手続,費用等詳細は,当弁護士法人までお問い合わせください。