相続放棄の際の注意点

 

Q 

  1ヶ月前に夫が亡くなりました。夫には1000万円近い借金がある一方で、それ以外には目ぼしい財産がないことから、相続放棄をしようと考えています。

  相続人は妻の私と2人の子どもです。この3人で相続放棄の手続きをすれば夫の借金の問題は大丈夫ですよね?

 

 --------------------------------------------------------------------------------

 

A 

  相続放棄とは、相続人が相続の効果を確定的に拒絶し、初めから相続人でなかった効果を生じさせるという相続形態です。

 

  相続放棄をすることによって、放棄者はプラスの財産(不動産、預貯金等)もマイナスの財産(負債等)もすべて承継しないことになるため、今回のケースのように、被相続人が多額の借金を残して亡くなった場合に相続放棄が選択されることが多いです。

 

  そして、相続放棄は、原則として自己のために相続の開始があったことを知った時から3ヶ月以内に、家庭裁判所に相続放棄の申述書を提出する方法によって行います。

 

  さて、今回のケースで、妻は、夫の残した1000万円の借金を相続しないようにするために、2人の子どもとともに相続放棄をしようと考えています。確かに、相続放棄をすることによって、妻と2人の子どもは夫の借金を相続しなくて済むようになります。

 

  しかし、ここで注意すべき点は、これで夫の借金の件がすべて片付いたわけ

 ではない、ということです。

 

冒頭で説明したとおり、相続放棄は、「初めから相続人とならなかった」という効果を生じさせます。そうすると、妻と2人の子どもが相続放棄をした場合、相続手続との関係では、相続人として妻(配偶者)も子ども(第1順位)もいなかったことになるため、第2順位にある夫の父母が相続人としての地位に立つことになります。

 

すなわち、妻と2人の子どもが相続放棄をすることによって、夫の父母が夫の借金の全額を相続することになるわけです。したがって、夫の借金の相続を避けるためには、夫の父母も相続放棄の手続きをする必要があります。

 

さらに、夫の父母が相続放棄をした後もまだ安心はできません。今度は、第三順位にある夫の兄弟姉妹が相続人となり、夫の借金を相続する地位に立たされることになるからです。

 

したがって、この場合も同様に、夫の借金の相続を避けるためには、夫の兄弟姉妹による相続放棄の手続きが必要となります。

 

このように、妻と子どもが相続放棄をしても、第2順位にある被相続人の父母、さらには第3順位にある被相続人の兄弟姉妹に相続人の地位が移ることになるため、これらの方々にも連絡して一緒に相続放棄の手続きをするなどしないと、後々親族間でトラブルに発展する可能性があります。

 

相続放棄をする際には注意してください。