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      刑の一部執行猶予制度について教えてください。

 

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1 2016年6月から、刑の一部執行猶予制度が施行されました。

 

 

  まず、執行猶予とは、刑罰を一定期間先延ばしにしてもらえる制度です。執行猶予に付された人が再び罪を犯したりすることなく、その猶予の期間を無事に過ごしたときは、刑の言渡しそのものが効力を失い、将来まったくその刑の執行を受けることがなくなります。

 

 

2 今までは、刑の全部について執行猶予を付けるか、付けないか(実刑)という選択しかありませんでした。しかし、これでは、満期で刑務所から釈放される場合は、再犯防止のための社会内での処遇が何ら実施されておらず(刑務所内での処遇しかできない)、また、刑期の満了前に条件付きで社会復帰させる仮釈放については、実質的に仮釈放の期間が数か月程度と短くなることが多く、再犯防止の処遇を施すには不十分で有効に機能していないのではないかと指摘されていました。


 そこで、受刑後、十分な執行猶予の期間を設けることで、従前の制度の問題点を克服し、再犯を防止しようという趣旨で、刑の一部について執行猶予を付けられるようにするというのが本制度の狙いとなっています。

 

 

 たとえば、「被告人を懲役2年に処する。その刑の一部である懲役4月の執行を2年間猶予する。」といった、宣告刑の一部の執行を猶予する内容の判決が一部執行猶予制度の判決です。

 

 

  上記の例の判決ですと、まず刑務所で1年8月の間服役し、その後釈放されて、執行猶予が取り消されることなく2年間を経過すると、1年8月の懲役刑に減刑されることになります。つまり、釈放後2年間再犯をしなければ、結果的に4月分は刑務所に行かなくてもよくなります。そして、その2年間の猶予期間中は、再犯防止のための社会内処遇を行うことが想定されています。

 

 

3 したがって、本制度は、全部執行猶予とされる事案に適用されるものではなく、あくまでも実刑相当の事案について、犯罪者が再び犯罪に手を染めることのないようにする特別予防の見地から適用される制度となります。また、一部執行猶予制度は、刑の言い渡しについて新たな選択肢を設けるものであって、犯罪をした者の刑事責任に見合った量刑を行うことには変わりがなく、従来より刑を重くし、あるいは軽くするものではありません。

 

 

4 加えて、一部執行猶予期間に保護観察が付されるかどうか、その点の運用がどうなるかは弁護士としても注視する必要がありますが、現在のところ、刑の一部執行猶予の場合は執行猶予期間中に保護観察に付されるケースが多くなると予想されています。これは、現在のところ再犯防止のための社会内処遇が、保護観察所が主催する専門的処遇プログラムを受けることと想定されているためです。保護観察は刑罰ではないものの、遵守事項を遵守し、定期的に生活状況等について保護司から指導を受け、報告をする必要があるため、その点では完全に自由とはなりません。


 そうすると、全部実刑で仮釈放を受けるより、一部執行猶予での服役期間と執行猶予期間を含めた期間の方が、判決時から社会内処遇を想定している分,完全に自由になるまでの期間が長くなるということもあり得ますので、その点は注意が必要です。

 

以 上